よう壁のまたがる家

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建築基準法・第38条では 、
『建物の基礎は、地盤の沈下、変形に対して安全なものでなければならない』と定められています。
さらにこの法律の規定を受けて、住宅関係の基礎をより細かく規定した告示では次のように書かれています。

『・一体の鉄筋コンクリート造とすること
・ 木造の建築物(略)の土台の下(略)は、連続した立上り部分を設けるものとすること。』

つまり、基礎を設計する際には地盤の沈下や変形に対して考慮せよということですし、基礎は一体で造り、かつ、基礎の立ち上がりは連続していなければならないと具体的に決められています。それをしていない設計は建築基準法を無視(違反)した建物と言うことになります。

この建物を検討していた建築主の方は、よう壁にまたがった建物に不安を感じたので、私に相談され、その後こちらが用意した条文資料とともに、その売り主と一緒に審査機関に出向き、「こんな計画でも問題ないのか」と、法律解釈の説明を求めましたが、そのときは「特に問題は無い」と業者をかばう姿勢を崩さなかったそうです。

法律を普通に解釈すれば、下図のように連続した一体の基礎はよくて、不連続な基礎はダメとなります。今回のよう壁にまたがる事例では、高低差が3mもあり、しかもよう壁が間にあれば基礎を一体で作るも基礎の立ち上がりを連続させることも出来ません。

そんなことより何よりも、このような法律の規定を知らなくても、よう壁によって分かれてしまった地盤では、地震や雨の影響を受けたとき、その地盤の沈下や変形も異なると考えるのが良識ではないでしょうか。

結局、常識すら無い不動産業者が土地を作り、建築基準法で書かれている最低限の法律すら知らない建築士が図面を作り、それに輪をかけて審査機関が見て見ぬ振りをする、あきれた事例だったと思います。

でもその後すんなりと業者が手付け金を返し契約解除に応じたと言うことは、裁判になったら負けるということがわかったから返したのでしょう。後で審査機関から、「あれはあんた(不動産業者)がいたからこれでも良いという素振りをしたが、あれはダメだよ」と言われたのかもしれませんが、そうであっても情けない審査機関です。

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もし沈下事故が起きれば誰の責任か

このような事を知らずに誰かが購入し、その後、不同沈下などが起き、建物に被害が出ればどうなるでしょうか。答えは簡単です。
いくら建築基準法を知らない不動産業者でも、合法的な建物を引き渡す法律上の責任はありますから、法律を知らなかったからと言ってその法的責任を免れることは出来ません。そして、設計者も法律を無視した建物を設計し、審査機関もその問題を見過ごしたのなら、そのどちらもが賠償責任から免れることはできないのです。
(訴える相手が2人以上いても、実際に誰を相手に賠償請求をするかは、訴える側の任意です)

補足:どっちを見ている審査機関

原発事故のあと、今まで独立していると思っていた原子力安全委員会も、結局は行政や原子力産業の言いなりで、追認するしか能のない集まりであることがわかりました。そうすることが彼ら原子力安全委員自身の保身術であることは明らかです。
同じように、建築主が審査代金を支払っているにもかかわらず、設計者や不動産業者をいわばお得意様とする審査機関の中には、このようにどっちを見て仕事をしているのかわからない審査機関も一部にはいるようです。

なお、今回ご紹介している3つのケースは、極めてイレギュラーなケースだろうと思います。しかし、土地が限られているというだけで、過去にこのような悪質な売買事例があったことも事実ですし、それが全く別々の業者によってなされたと言うことも気になるところです。


社会常識に味方せず、
業者の味方をする人たちがいる。
ムラでメシを食う情けない人たち

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