軸組工法の耐震性の確保は、右の図のように、筋交いや構造用合板(*1)を張った部分を、耐力壁(たいりょくかべ)という地震に対抗できる特別な壁とすることが出来ます。それ以外の壁は、耐震性にはほとんど寄与しない『ただの壁』です。
しかし、これだけでは、耐力壁の『種類』と『量』を定めているだけで、その『質』を確かなものにするために、『耐震金物』をそれぞれの柱ごとに計算するか、法律で定められた表から選んで使うことが法律で義務づけられています。
この規定は、阪神大震災の木造住宅の倒壊原因を調べあげた結果、大きな強さをもつ耐力壁には、大きな引き抜き力が加わるということがより明確になり、柱ごとに耐力壁の種類と配置によって金物を決めなさいとする平成12年に改訂された法律のひとつです。(*2)
大きな強さを発揮できる耐力壁には、大きな引き抜き力が加わるために、より大きな耐震金物を設けなければならず、それぞれの壁の耐力壁の種類や配置によって、この柱には2.0トンの引き抜き力に対抗できるホールダウン金物が必要だ、この柱にはもう少し小さな金物でよい、といった規定が設けられたのです。
そのため、右上図のように、耐力壁の種類や配置によっては、柱ごとに使う金物をかえる必要があります。
この法律が出来るまえの昔の公庫の仕様では、右図のように、通し柱や、建物の隅にある柱だけにホールダウン金物を取付、それ以外は山形プレートなどの、弱い耐震金物をつけるだけでよい、というものでした。
上の図と比較すると、ホールダウン金物の数も、金物の種類も大きく変わっていることがわかると思います。
(*1)耐力壁として構造用合板を用いる場合は、その張り方にも規定が定められています。建売系では、その様な規定すら知らずに、ただただ、構造用合板を張れば良いと思っている設計者、施工者も多い。
(*2)この規定は木造3階建てでは以前から規定されていたものです。
しかし、この法律を知らずに、昔の公庫仕様が今も生きていると思いこみ、法律の改定も知らずに平気で古い基準のまま建物を建てている業者がいます。
このサイトで行っているサポートサービスでも、軸組工法を扱っている会社の約1/4から1/5(*2)程度の建築会社が、このような無知を実態とする違法建築が行われています。
(*2)建物の数の比率ではなく、会社の数での比率。大手ハウスメーカーなどはキチンと計算しているため、建物の比率でいうともっと少なくなる。なお、2〜3年前は1/3以上の会社が法改定を知らずに建てています。
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