僕、知らない!

「建築条件付き」の土地や建物をチラシなどから選び、仲介業者や売り主と話を進めている中で、どうも思っていることと違うと「違和感」を感じる方がいます。

その「違和感」は、営業マンに建物の説明を求めても知識がない感じがする。あるいは間取りの提案をお願いしているのに、なかなか良い提案をしてくれないでいらいらする、といった場面に出くわすことで感じるようになります。
もちろんこの現象は売り主となっている会社の規模や体質などで大きく違い、「建築条件付き」だからすべての物件がそうなる、ということでもありません。

この感覚をもつ最大の理由は、建築主の側が単に出来合の分譲住宅を買うのではなく、間取りや仕上げが自由に決められるなど「注文住宅に似た期待」を持っているのに、売り主側がそのような対応をしていないと感じるときに起こります。

なぜそんなことが起こるのでしょうか。
あるいは、今、そういう場面にぶつかっている方へ、その疑問の解説をしてみましょう。

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土地を売ることがメインの営業マン

建物に対する知識がないと感じる営業マン。何を聞いても曖昧な返事や、返ってくる答えが遅い。
その理由は・・・・。

土地こそ判断基準の大きな要素

「建築条件付き」の場合、まず、その会社の売り出している物件に決めるかどうかは、その土地の立地や校区、価格、利便性が購買決定の大事な要素で、住宅の価値や仕様よりも土地そのものが最初に購買意志を決定する材料になっています。
ところが注文住宅の場合は、その建物の価格や仕様、間取りが判断材料となり、その中に土地の立地や校区、利便性が入る余地は全くありません。

つまり、「建築条件付き」では、土地こそ購買動機の第一ポイントなのです。

土地を売る、建物を売る-購買動機の違い

そうなると、「建築条件付き」などを販売する会社は、まず土地を気にいってもらう。注文住宅専門の会社は建物を気に入ってもらう。(その価格も含めてですが・・)つまり、前者は土地の場所や利便性、価格さえ気に入ってもらえれば、建物は二の次でよい。ところが後者の場合は、建物そのものの価格や仕様、あるいはデザイン性、間取りの提案力がどの会社を選ぶかの判断材料になっています。

つまり、判断材料の軸足が違うということですね。

建物は付け足し

このように、「建築条件付き」の物件では、営業マンや仲介業者は建物の知識がそれほど無くても「土地そのものの魅力」だけで半分以上売れ行きが決まり、建物の知識が無くてもそれほど営業力に差が出ないという構図があります。
そのため、注文住宅専門の営業マンと比較すれば、建物に対する知識は「建築条件付き」の営業マンの方が少ない、と言えます。

なぜ契約ばかりを急がせる?

では、なぜ契約を急がせるのでしょうか?
その理由は・・。(すべてではありませんが)

歩合給と固定給

「建築条件付き」などのいわゆる土地からの物件を中心に販売している住宅会社と、土地がすでにあり、その上に注文住宅を建てる住宅会社の営業マンで大きく違うのは、前者の営業マンは歩合制が多く、後者はそれが少ない、という給与体系の大きな違いがあげられます。

つまり、より個々個人の契約を急ぐ気持ちが高くなりがちなのが、「建築条件付き」の営業マンたちです。

契約を急がせる理由

ある中堅建売業者の求人広告が載っていました。
この会社の場合年間15件の契約をしないと650万円の年収が保証されず、年間21件の契約を成立させれば、年収は1100万円に跳ね上がるシステムです。

よく「まずはご契約を。詳細はあとでいくらでも詰められます」と契約を急ぐケースが多いですが、こういう自分の給与の事情が絡んでいるからこそ、契約を急がせるのですね。

さらなるギャップの根底

彼らに比較的共通しているのが、「私は、自社の建物の特性を知り尽くしたハウスメーカーの営業マン」というイメージではなく、「土地の立地と利便性と価格を知り尽くした土地を売る不動産の営業マン」という意識の方が強いでしょうね。そして、「付随的についてくるのが建物だ」という感覚でしょうか。
ところが建築主の方は、間取りなどの打ち合わせに入れば「建物」のイメージの方が遙かに強いですから、そこにギャップが生まれるのですね。

そして、ハウスメーカーの営業マンは、いつまでもいつまでも自社の建物を売っています。つまり建物に強くなります。ところが「建築条件付き」の営業マンたちは、一つの物件が売れれば、違う特性=くせのある土地(団地)を売らなければならないのです。売ったあとは設計者が面倒見てくれる建物よりも、違う特性をもつ「土地(団地)」をどうやって売っていくかが、彼らに課せられた次のもっとも大事な仕事なのです。

つまり、相手とあなたと見ている方向が大きく違った場合に、このギャップは大きく感じ始めるのです。

そしてこのようなニュアンスは、「建築条件付き」の売り主の営業マンだけでなく、仲介業者の担当者も似たような傾向を持っています。
土地の立地、価格で商談を決めさせる。建物は付随的なものという感覚です。

設計料は、いつも定額性の設計者

  • プラン一つに、どうしてこんなに時間がかかるのだろう…?
  • こちらのプランをなぞるだけで、提案すらしてくれない…
  • いつも、こちらが注文した何かを忘れて図面ができあがる…

そんな不満がわいてくる場合があります。

設計料は、いくらやっても定額

「建築条件付き」を建物を売っている住宅会社の多くは、規模が小さくなるほど設計作業は外部の建築士事務所に外注している場合がほとんどです。そしてかれらは、一律○○万円といった形で報酬を受け取っています。そしてその中に間取りの打ち合わせも、建築確認の費用も、検査の立ち会いもすべて含んだ費用となっています。つまり、「こみこみ価格」での発注です。

これでは、間取りの打ち合わせや図面を書く回数は少なければ少ないほど、効率がよい仕事、よいお客さんということになります。打ち合わせ回数が多くなったから、一生懸命考えたから、良いアイデアを出したから設計料も多くもらえるというものではありませんからね。
そうすると、お客さんが言った間取りは図面化するけれども、それ以上の提案はしても、しなくても自分の収入には関係ない、と考える設計者が出てくるのが道理ですね。

自分の仕事が決め手につながるかどうか

もう一つモチベーションという問題があります。

注文住宅の場合は、間取りやデザイン性も他社との差別化で大事な要素ですから、設計次第で仕事が決まる、という部分が大なり小なりありますが、「建築条件付き」の場合は、すでに土地の売買契約をしています。つまり、『もう、この会社で建てるのだ』という意志を決めた上で設計作業をスタートしていますから、設計や提案能力が購買動機にはなりづらい側面があります。

そう考えると、曲がりなりにでも間取り提案や設計作業を手を抜かずキチンとしようと考える設計者と、どのみち設計料はいくら手間をかけようが一定額なのだから、「問題が出ない程度に仕事をしておけ」式の設計事務所がいてもおかしくありませんね。
前者は設計という作業そのものが好きな設計者。
後者は銭金(ぜにかね)が基準の設計者とでも言えるかも知れません。

ところが、「建築条件付き」の建物は曲がりなりにでも「間取り自由」ですから、建築主の方も注文住宅に似た感覚を持ち、期待し、『良い間取り、良い設計をして欲しい『と願っています。そして建築士は誰でも優れた提案をしてくれるものだろうという先入観も持っています。そういうときにおざなりな図面が出てくると期待が外れ、売り主(設計者)と建築主のギャップが生じてしまうのです。

注:もちろん、これと正反対に少ない設計料でも、キチンと力を入れて設計している設計者もいますよ。

結局は売り主の体質、資質の問題

こう書いてしまうと、まるで個人の営業マンや、個人の設計者の資質そのものが問題であるかのように思われがちですが、そうではありません。この点はくれぐれも間違わないようにしてください。
こういった対応が見受けられる会社は、結局はそれを放置し、売れればよいと考えている「売り主」そのものの体質からくる問題なんですね。
そしてこういう場合、なかなか良い交渉術は見当たりません。でも焦らず、気長に自分有利になるまでじっくりと腰を据えておつきあいするつもりでいた方が良い結果になりやすいですね。

焦りは禁物。

『まぁ。おたくがだらだらするなら、私の決済(決定)もそれだけ遅くなりますねえ・・・遅くなるのは、あなた方の事情なんですから』 ぐらいの開き直りが良いかもしれませんよ。
そのためには、買い手にも余裕が必要かもしれませんね。

こういう場合、建物の請負契約を焦るのは相手。
『今まで何軒も不動産屋を回ったんだ。あと少し遅くなったって・・』という余裕が決め手なのかも知れませんよ。
少なくとも、いらいらしても何も解決しませんから。

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