施主支給のコツ

「施主支給」を調べると、あるホームページで次のように書いていました。

施主支給とは、お施主様ご自身で住宅設備機器・建材等を直接購入し、工務店(ハウスメーカー、リフォーム会社など)に支給することです。この施主支給という方法をとることにより、自分の気に入ったメーカーのお好みの商品を選ぶことはもちろん、中間マージンを削減できるので、その商品を格安にて購入することが可能となります。

「自分の好きなものを選べる!!」
「中間マージンが無くなるから安くできる!!」

ぐぐっとくるキャッチコピーですね。

でも、正直なところ、「施主支給」を『本気で』歓迎してくれる住宅会社さんは少ないでしょうね。その理由は「自分の好きなものを選べる!!」「中間マージンが無くなるから安くできる!!」 というメリットだけが強調され、住宅会社が苦労するある事情が見落とされがちだからなのです。

それは、一番上に書かれた「中間マージンが無くなる」ということはきっと住宅会社は自分たちの利益が減ることをいやがっているのだ、といううがった理由ではないのです。

建築主が、「施主支給」でほとんど見落としがちなある問題。
それには次のようなものがあげられます。

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受け渡しの流れが使えない

普通、施工会社は特定の建材メーカーや設備問屋などと取引をしてます。そのため、電話一本で建材を現場まで届けられる流通システムができあがっています。

そのため、

  1. 現場監督が何時ごろ資材を入れると適切かを大工さんたちと相談する
  2. いつも使っている建材店等に、電話やFAXで資材を依頼する
  3. 現場ではいつも大工さんがおり、荷物を受け取ってくれる
  4. 建材店も屋内の所定の場所まで運んでくれる

という『流れができあがっているのです』

一般貨物は小口まで運んでくれない

ところが、「施主支給」のほとんどは、一般貨物便なので戸口までしか運んでくれませんし、時間指定は出来ません。(宅急便は時間指定が出来ますが、一般貨物便の場合はほとんど出来ません)

「施主支給」で使われる一般貨物便は例外なく、現場の敷地の前までしか運んでくれず(小口渡し)、建物の中に運ぶには別の人手が必要です。 これが、一部屋程度のフローリングとか、玄関に張る程度のタイルなら現場にいる人たちが手分けをして運べば良いのですが、もう少しかさばると、戸口から屋内への運搬のために時間と人を割かなくてはならないし、濡れてダメなものなら、雨模様も心配しなければならない。

つまり、『受け渡しに今まで会社が培ってきた都合のよい流れ』を全く利用できない気遣い、気苦労が生まれるわけです。

ゴミの問題

建材であれ、住宅設備であれ、どんなものでも一定の梱包をしています。
そうするとゴミが発生します。(右の写真は現場で良く見かけるゴミのパケットです)
ゴミの処理方法は各社いろいろなのですが、基本的には各社持ち帰りで、大工仕事で生まれたようなゴミしか元請けの建築会社は処理しない場合が多く、住宅設備の梱包材などは、その設備業者あるいは機器メーカーが持って帰る場合が多いです。

しかし、「施主支給」の資材、住宅設備であれば元請けの住宅会社が処分しなければなりません。キッチンなど大きな部材では、ライトバン一杯の梱包材が出てしまうことだったあります。
これも、費用的にどうと言うことはないことなのですが、増える気遣いの一つですね。まして、そんなみみっちいことまで請求できませんしね。

取付や工事の問題

「施主支給」であろうが、その取付や工事は結局施工者たちがしなければなりません。
その中で施工者が気を揉むのが、うまく取り付けできるのかどうか・・といった問題です。

一つの例が住宅設備です。 最近でこそ、いわゆるグローバル化で、輸入部材の取り付け方法や必要部品といったガイダンスが相当細かく表示されるようになりましたが、昔は、その品物が来ないとわからない・・と言ったこともあります。そのため、昔は、建築主の方がおしゃれなカランを頼んだものの、取り付け口径や配管の接続方法が日本の規格と違っていたので、仕方なく無理矢理こじつけたなんてこともありました。

また、フローリングが支給で配送されてきても、歩留まり(不良品の率)が悪く、追加発注をしないと足らないといった問題が出ると工程にも影響を与えます。
たとえば、建材などで輸入材の安いだけの製品は、不良品も混ざっているため、送ってきた製品の2割は使えないなど、余分に材料が必要になるといったことも起こります。

つまり、施工者にとっては、最終的に取り付ける責任がある以上、『物を持ってきたから、さっと取り付ければ良いんだ』というほど簡単に考えてはくれません。取り付けるために足らないものが無いか、不良品は入っていないか、ロス率は大丈夫かと、ついつい考えます。

特に以前、善意で施主支給を了解したものの、入ってきた品物が粗悪な製品で、その取り付けや工事に苦労した経験のある業者・・つまりは、過去に苦労した業者は、それがトラウマとなってしまい、無条件で施主支給そのものをいやがってしまう会社もあります。
(輸入品の製品品質や取り付け説明が悪かった昔に多い例です)

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施主支給まとめ

今までの説明を読まれた一部の方は、①業者の肩を持っている。②施主支給は良くない、と聞こえるといった印象を持つ方もおられるでしょうね。

ここで誤解の無いようにしておかなければならないことは、施主支給がダメだと言っているのではありません。お互いに立場が変われば、ものの見方、とらえ方も違ってくる。相手の立場に立って物事を考えると、施主支給もうまくいきやすいと言うことです。そのために、あえて「業者側の視点」で書いてみたのです。

もう一つは、本当に中間マージンが無くなるのでしょうか?

中間マージンが無くなるからイヤなのか?

たとえば35坪の住宅を坪60万円で請け負ったとしましょう。工事費は2100万円です。この中のたとえば100万円の建材や住宅設備が施主支給を求められたとしても、わずかに5%程度にしかならず、その中の業者の利益の損失はせいぜい10~13万円程度です。また、逆の見方をすれば、打ち合わせ段階で35坪で計画していた建物が、顧客の予算の都合で33.5坪に小さくなったことで、工事費が目算よりも減ったから、『お客さん。35坪建ててもらわないと、ウチの利益が少なくなるんですよ』なんて変なことをいう業者もいませんね。

つまり、工事量が減ったから、自社の利益が減った。だから施主支給をいやがるのだと、うがって考えるような問題ではないのです。(300万円も400万円も施主支給すれば別ですが・・)
あるいは冒頭に書いた「中間マージンが無くなるから安くできる!!」といったみみっちい話でもないのです。

それよりも長年の間に作ってきた

  1. 工事全体がスムーズに行くための流れが変わる
  2. 初めてのものを取り付け、部品が合わなくて失敗した経験がある
  3. 取り付けも完成後も『結局』面倒を見なければならない
  4. 部材が足らなくなって、追加注文が必要となり、工期に影響する

このような工事上の問題が発生するから、いやがる・・という例の方が多いのではないでしょうか。

施主支給をうまく運ぶツボ

最後に、施主支給を気持ちよく受けてもらえるテクニック。それは、相手の立場を理解して、相手の不安を取り除くように交渉し、実行することではないでしょうか。

建築主は、そもそもが欠陥住宅等等、この業界に一抹の不安を抱いているからこそ、このホームページを始め、いろんなところで情報収集をして、自分に火の粉がかからないように、あるいは少しでも有利な情報を集めようとしています。 施主支給はその立場が全く逆転する唯一の部分です。

「不良品は。ロス率は。受け渡しは。ゴミは。取付と部品は・・・。」と不安を感じるのは業者の方なのです。
つまり、相手-施工進行上-困る問題を考えてみましょう、ということなのです。

このことがわかり、相手の立場で考えれば施主支給はきっとうまくいくでしょうねぇ。
そして、相手が施主支給に気乗りのしない返事だったら、上のことを考えてみるのも一つでしょう。

ちょこっとCOLUMN

注文住宅と建売住宅(建築条件付き)の違い

この2つでも大きく異なり、どちらかというと注文住宅の方が施主支給には慣れています。

それは、建坪も価格も決まった建売住宅(建築条件付き)では、最初から、いくらで売って、いくら儲けるかがしっかりと組み込まれていますが、注文住宅の場合は、建てる坪数も扱う建材も全くの一からですから、ハウスメーカーであれ工務店であれ、一から積み上げていって見積もりをする。その過程でたまたま施主支給があるという行為になれています。

つまり、 契約する前から自社利益を想定しているのが建売住宅(建築条件付き)。 契約するときになって初めて自社利益が確定するのが注文住宅。
この利益という思惑の違いで、注文住宅の方が施主支給には融通が利きやすいと言えます。

儲かりまへん

もう一つ、いやがる会社に多い心理的な側面があります。

その理由のほとんどは、せこい利益主義ですが。。。。『だって、施主支給というのは、会社から見れば予定していた売上が下がり、予定していない手間が増え・・・・とろくな事がないやん』 と考えている会社もあるでしょう。

施主からすれば、施主支給は建築費を安くするためにする。というシロモノですが、この点はお互いに相反する立場なのです。 この当たりが、「お客様は神様です・・、夢を叶えましょう」なんていう、おだて言葉を連発しつつ、それはそれ、これはこれと、利害の相反するところなんですね。

そういう意味で、施主支給は、どちらかというと建築会社の考え方に大きく左右されるシロモノですから、施主支給に理解のある会社でないとうまくいきません。

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