世の中の多くの方が住まいを取得しています。そして多くの人はこのような事に思いを巡らすこともないでしょう。なぜなら、ほとんどがまじめな業者で、まじめに法律を守って仕事をしているからです。
でも、時々いい加減な業者や自分勝手な業者、あるいは無責任な営業マンも横行しているのが不動産業界、住宅業界です。
「契約自由の原則」は経済社会、現代社会の大原則(概念)となっています。
私たちは「契約自由の原則」の上に立って自由な契約や取引が出来ると同時に、その結果責任は全て自分がかぶらなければならないのだ・・・と言うことを肝に銘じておく必要があるでしょう。
■補足
このように書いていくと契約約款を吟味しなければダメだ、と誤解されやすいですが、決してそういうことを言っているのではありません。
住宅の契約トラブルで最も多いのは「仕様が曖昧なままに契約して、後での追加変更で、費用が相手の言いなりだった」というケースです。たとえば、単にシステムキッチンと書かれているだけでは、その後で変更しても何を基準に費用の増減がされているのか追求のしようがありません。最初の仕様が曖昧であれば、最初にチラッと見せてもらったものよりもグレードの下げた商品カタログの「この中から選んでください」といわれても文句の言いようがありません。また、工期が明確でなければ、ずるずる工期がのびても遅延金を請求する根拠がありません。
つまり、約款という事務的な決めごとではなく、曖昧な仕様(内外装の仕上げや住宅設備のグレードや中身)のまま契約することや、相手を盲目的に信用して過分な支払を続け、トラブルが起こっても言いたいことが言えない支払条件を飲んで契約してしまうといった、自分が不利な立場に追いやることを意識もせずに契約してしまうことが最大の原因なのです。
私が曖昧な仕様で契約をしようとする方に言う言葉があります。
「あなたは自動車を買うときに、250万円という金額だけで契約するのですか?」
「エンジンの排気量も知らず、シートがレザーシートかファブリックシートかも知らず、キーレスエントリーが付いているのかどうかといった細かなオプションを全く見ずに、ただ、この大きさとこの金額というだけで今まで契約していたのですか?」と。
そしてこれを問いかけられた全ての人は「いいえ。そんな契約はしませんでした。細かなオプションまでチェックして契約しました。」と返事をされます。
自動車は、買い手商品選びやすいように、比較検討がしやすいように、売り手側によって詳細な仕様(バンフレット)が用意されています。でも、住宅はそういう仕様を一生懸命説明しようとしている良心的な業者と、売れればいい、契約できればいいと考えるだけの、おざなりのパンフレットしか用意していない質の悪い業者も一杯いる世界なのです。
不動産業界や、住宅業界は始めてだから勝手が分からない、という逃げ口上を言う方もいます。でも、今までの説明を全て読めば、相手の良いように躍らされているだけだったのが分かるはずです。
あなたが通ってきた世界のほとんどは、売り手が商品の内容を十分に説明していた世界。でも不動産業界、住宅業界は少し違います。その違いを知ることが、「契約自由の原則」を理解することになるのです。
そして私たちを取り巻くほとんどの法律は、「私権を侵さない。契約の自由を侵さない」という大前提で作られているからこそ、契約のもたらす結果について法律が私たちを守ってくれる訳ではないのです。
|
|
|