最近、遮熱断熱材あるいは遮熱材といったものが注目される、住宅でも津買われてくるようになりました。
このページでは、遮熱断熱材とはなにか。その効果はどんなものなのかといったことを説明していきましょう。
その前に、遮熱材を知るためには『熱』というものを知っておく必要があります。少しだけ、その原理を理解しておきましょう。
熱源と輻射熱
私たちが恩恵を受けている熱源の最たるものは、あるのが当然のごとく思われている太陽熱で、私たちは、太陽が降り注ぐことにプラスして、地球の自転によって昼と夜が生まれ、公転によって夏暑く、冬寒いという四季を感じることができます。
もう一つの大きな熱源は石油や天然ガスといった化石燃料です。これは、火力発電所で作られた熱を電気というものに姿を変えて、電気ストーブやIHヒーターで使われ、液化天然ガスをベースにしたガスストーブやガスコンロといったものから、石油そのものを使った石油ストーブ等があります。
あるいは木をそのまま焚いたたき火なども原始的ですが、直接的な熱源もあります。
次に熱源には、これ以外にも真夏の砂浜の熱くなった石ころも熱を持てば暑い熱源となり、カンカン照りで熱くなった道路も熱源となり、熱を放出しています。
そして、これら熱源や暖められた物体から放出される熱のことを輻射熱といっています。
つまり、暖められた物は、石ころであれ、道路のアスファルトであれ、「輻射熱」というものを出しているのです。
熱の移動3原則−伝導、対流、輻射
熱があるところから、あるところへ移動する現象には3の方法があります。そして、それを制御するのが「断熱技術」です。つまり、熱を断つ。熱の移動を防ぐ技術のことなのです。
■物を伝わって熱が移動する『伝導』
伝導の簡単な事例は、アルミのやかんです。アルミのやかんは熱伝導率が高いので、お湯を沸かすのに好都合と言われますが、これは火口の熱がアルミを伝わってその中の水に熱を伝えているからです。
伝導というとわかりにくいですが、物体を伝わって、熱が移動していると考えればいいですよ。
■空気が移動することで生じる『対流』
これは、冬に締め切った部屋の窓を開ければ、冷たい風が入ってくる、といったことに代表されるように、空気の移動によって熱が移動する現象です。
エアコンやファンヒーターが室内を冷やしたり暖めたり出来るのは、エアコンやファンヒーターに内蔵されたファンが、『対流』を利用して本体から発生している熱の移動(放出)を手助けしているからです。
■熱が直接放射される『輻射』
冒頭の「輻射熱、熱源」で説明したように、熱を発するものはすべて『輻射熱』を放出し熱源となっています。
・床暖房は、「伝導」と「輻射」の原理
床暖房も2つの熱移動をうまく利用した生活器具です。
まず、熱源である床暖房の器具が発熱し、その熱がフローリングに伝導され、そして、暖かくなったフローリングが熱を室内に放出しています。つまり、『伝導』によって、フローリングに熱を伝え、熱を持った物体(フローリング)が熱を放出するという『輻射』を利用した暖房の方法です。
このように熱は、伝導や対流あるいは輻射の仕組みを組み合わせながら影響を与え、あるいは利用されているのです。
今までの断熱対策は、『伝導』対策が中心
では、今までの断熱対策は何かというと、ほとんどすべて『伝導』対策なのです。
身近な例では発泡スチロールでできた保冷パックは内部の熱が外部に逃げないようにする『伝導』対策のための道具ですね。
断熱材を建物に入れるというのも、保冷パック同様に夏の高い外気温が室内に入る(伝導する)のを防ぎ、あるいは室内の冷やされた温度が外部に出て行く(伝導する)のを防ぎ、冬も同様に寒い外気が伝わらないように、室内の暖かい空気が逃げていかないように、熱伝導率の低い材料、すなわち、断熱材というものを入れていたのです。
遮熱は、全く新しい手法
では最近注目されている遮熱とは何でしょうか。
(財)省エネルギーセンターのホームページでは、遮熱のことを次のように書かれています。
『遮熱とは、夏の日射熱を建物の外部で遮り、室内にその影響が出ないようにすること』
その前に少し石油ストーブの進化の歴史を思い出してみましょう。
まず最初の石油ストーブが出来たのは、写真の左のような『輻射』だけを利用するストーブでしたね。
しかし、これは、『輻射』の原理だけを利用していたために、ストーブの近くは暖かくても、遠くまで均一に暖かくなるには時間がかかりました。
次に出てきたのが、写真の右側のような燃焼部の後ろにアルミの反射板を作り、熱が後ろに逃げないようになっている製品ですね。
後ろに熱が逃げず、熱源の前面だけに熱を放出出来るために、壁際などに置くことが出来るようになりました。
そして、3番目に出てきた製品が、ファンを内蔵した製品です。これは熱源から発生する『輻射熱』をファンによって『対流』を起こすことで遠くまで均一に熱を移動させることに成功しました。
もちろん、エアコンもこの原理を利用しています。
つまり、遮熱材は、石油ストーブの進化の過程の2番目の遮熱(反射)を太陽に対して使っているのです。
この石油ストーブの反射板があることで裏側に無駄な熱がいかないように遮蔽し、熱を反射させているように遮熱材は太陽熱を反射することで、結果として建物の室内側に熱が届かないようにしている。これが遮熱です。
■遮熱材の効果
アストロホイールが公的試験所で行った試験では、屋根裏の温度が3〜4℃下がるというデータがあります。
試験(財)建材試験センタ−
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遮熱材有り
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遮熱材無し
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屋根の
表面温度 |
屋根裏の
温度 |
屋根の
表面温度 |
屋根裏の
温度 |
瓦 |
53.3℃ |
25.1℃ |
50.2℃ |
28.0℃ |
カラーベスト |
69.0℃ |
27.0℃ |
66.8℃ |
31.4℃ |
一方、タイベックも実験を行っており、下の写真のように屋根裏の温度が下がっているのが分かります。 (写真左が遮熱材無し、写真右が遮熱材有り)
メーカーにより表現の差はありますが、要約すれば、原理は太陽熱を反射し、あるいは遮り、下側に熱が移動するのを防ぐ。そして、その性能はグラスウールに換算すれば110mm前後の性能があり、エアコン1台程度は不要になる。
といったところでしょうか。
まとめ
今での「伝導」型断熱材と、全く同じ土俵で比較出来ないので、効果のほどが表現しにくいのですが、遮熱材は太陽からの熱で物が暖められ、それが熱を持ち、いつまでも持続して輻射熱を放出し続けるという負のサイクルを低減させるという点で、極めて大きな効果があります。
別な言い方では、右のペアガラスとLow-eガラスの比較同様に、「伝導」型の従来の断熱工法をペアガラスと考えれば、遮熱材を併用することは、Low-Eガラスのような効果と同じ。と考えればいいのではないでしょうか。
太陽の輻射熱を反射することが特徴ですから、夏が長くて暑い西日本のような地域には、是非取り入れたい断熱方法です。
しかし、どのメーカーもこの遮熱材だけで他の断熱材は不要だ、とは言っていないように、今までの『伝導』型断熱材と併用して使用するのがもっとも効果的な方法です。
次回説明しますが、遮熱材はその上に空気層(通気層)が無ければ全く効果は発揮されません。
また、遮熱材だけで断熱材は不要だと考えている間違った遮熱材の使い方をしている建築会社もあります。
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公転と太陽
地球が公転するとき、地軸は変わらずに太陽を356日かけて一周しています。そのおかげで四季が生まれるのですが、同時に地軸は一定であるため、夏と冬では太陽からの角度が違います。
その角度の違いは、夏と冬に表れる影で知ることが出来ますが、その角度のおかげで、太陽からの受ける熱エネルギーが夏と冬で異なり、その結果、太陽を真上から受ける夏は暑く、太陽を斜めから受ける冬は寒いのです。
■ヒートアイランドと輻射熱
真夏のワイドショーなどを見ているとサーモグラフィに映し出された赤くなった都市を撮した映像がありますが、ヒートアイランド現象の熱源となっているエアコンの室外機や熱せられた道路も、暖められた外壁もすべて輻射熱を発しているのです。
夏暑いのは、廻りが輻射熱だらけだからなのですよ。
■伝導
物体が熱を通過させる現象
その物体(材料)の熱伝導率が高いほど、熱を通しやすい材料と言うことになり、断熱材は熱伝導率の低い材料で、熱を通しにくい材料。
■輻射
物体が直接熱を放出する現象「 放射」とも言います。
・直接的なもの:太陽、たき火
・人工的なもの:ストーブ、電気
・輻射を利用したもの
床暖房、オイルヒーター、蓄熱暖房機など
■対流
物体そのものの中で熱が移動する現象で、空気でそれが起きている。
風は対流の一現象。
・エアコンやファンヒーターは対流を利用している。
■気密化と対流
伝導、対流、輻射。熱の移動で最も強力なのは何でしょうか。
それは、対流です。6帖程度の部屋でも、真冬に大きく窓を開ければ、わずか数分で室温は外気温近くまで下がってしまいますね。
いくら窓ガラスの断熱性能(伝導)が低くてもそこまで悪いことはありませんね。 つまり対流によって生じる熱の移動は大変大きな力なのです。
それを最小限にするのが気密化工事ですよ。
■石油ストーブの進化
すべてコロナ社製の石油ストーブ
■遮熱断熱材は、反射板の逆利用
■体感温度
私たちが『体感』している温度というのは、実は気温ではありません。
気温と言われる寒暖計で測れる温度以外に、周囲の壁や床、あるいは天井など廻りからの輻射熱、さらには、空気中の湿度の3つの要素によって、体感温度が感じられています。
断熱の中で、気温を制御しようとしたのが、今までの断熱材で、輻射熱をを制御しようとしているのが、この遮熱材なのです。
■Low-Eカラスも遮熱の原理
最近利用頻度が高くなってきたLow-Eカラスも、実は遮熱の原理を利用した製品です。
単なるペアガラスだけでは、熱の「伝導」を低くする効果しかありませんが、 Low-Eガラスがもうけている層は、熱を反射することでペアガラスより高い断熱性能を確保しているのです。
図のように、ペアガラスでも太陽の熱を79%通過させるのに対して、Low-Eガラスは、太陽熱を遮熱するために41〜50%程度しか追加させていません。(注:温暖型Low-E)
真冬の窓ガラスの内側にいるとぽかぽかと暖かいのは、窓ガラスが太陽の熱を「通過」させ、太陽の熱(輻射熱)を直接伝えているからですね。
■反射瓦
遮熱材を利用しなくても、瓦に釉薬がかけてあったり、反射性の高い処理を施した瓦などは、遮熱材に近い効果があります。
白色と黒色であれば、暑い地方では、反射性の高い白い色が建物の中心的な色調になっているのも反射の原理ですね。
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