クロスという防湿堤防

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ビニールクロス

 本来は、壁の外壁側には合板も貼らず、透湿防水シートだけを張り、室内側は気密防湿シートでバリバリにしておけば、内部結露は起こりません。
しかし、多くの建物はこのようなセオリー通りの住宅ばかりではありません。外壁は合板を張り、袋入り断熱材を貼ったものの、そう簡単にきれいに貼れるようなものではありません。いわばすき間だらけで施工されているのが現実です。
そうすると、室内の湿気がどんどん壁の中に入ってくるじゃないか。断熱材の防湿面をキチンと貼らなければダメじゃないか・・と考えてしまいますね。
袋入り断熱材は、防湿面を室内側にして、耳をキチンと柱にとめなければ・・とはこれも断熱材施工のセオリーですが、そんなにきれいに貼れるところばかりではありません。
右の写真は少しひどい施工ですが、それでも下地が細切れになっていれば、断熱材もぐちゃぐちゃと押し込まざるを得ません。

そういう不完全にならざるを得ない防湿工事を救っている建材があるのです。
それがほとんどの家で使われているビニールクロス
このビニールクロスの透湿抵抗値は、袋入り断熱材の17よりも貼るかに高く、60~80程度の数値を示します。下の表を見ても高い方に位置します。いわゆる気密シートの透湿抵抗値が452ですが、そこまで行かないものの、相当高い抵抗値であることは分かりますね。

材料名透湿抵抗
コンクリート 100mm厚69.9
サイディング7
土壁 60mm厚3.4
構造用合板 9mm厚10.3
OSB 11.1mm厚30.6
ダイライト 12mm厚3
石膏ボード 9mm厚0.78
グラスウール・ロックウール 100mm厚1.25
ビニールクロス60~80
ポリエチレンシート 0.1mm厚452
透湿防水シート 0.2mm厚0.087

ビニールクロスは結露計算に含まれない

ところが、結露計算をするときには、このビニールクロスの透湿抵抗の高さを計算に入れることは除外するように決められています。それはクロスなどは張り替えをするから、計算に含むな・・という理由のようなのですが、現実にクロスの張り替えなどは20年に一回もしないのではないでしょうか。

内部結露は、冷たく冷やされた木材や金属が、暖かい、湿気を含んで空気に触れることで起こります。(いくら暖かい空気に触れても、湿度が低ければ結露は起こらない)

つまり、室内に何気なく貼られた-計算から除外されている-ビニールクロスが、実は、室内で発生した水分(湿度、水蒸気)を壁の中に入れないような防湿堤防の役目をしているのです。水分が入らなければ内部結露は起こりにくいですね。

まぁ。だから袋入り断熱材の施工はいい加減で良いよ・・とはいいませんが、ほとんどの住宅で貼られているビニールクロスが防湿の役割を知らず知らずの間にしているのですね。

注:結露対策で計算をする場合は、このクロスは経常的な素材ではないという理由で含みません。 注:この話は温暖地域の場合です。厳寒の寒冷地で内部結露を防ぐためには、もっと高い防湿性能が必要です。

注:防湿抵抗が高いのはビニールクロスです。珪藻土クロスなどは、1/3程度の低くなっているようです。

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