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箱しか建てられないよぉ〜。 20007.10
申請現場の混乱、そして、予想外の着工率の減少といった現実の前に、建築士事務所協会や建設業団体、果ては、自民党までもが、国交省に対し、制度の改変や混乱を収拾するよう陳情がなされたそうです。
2.3日前の夜9時のNHKニュースでも、住宅が着工出来ない、大規模な介護施設の建設計画が途中でとまり、資金繰りに窮するかも知れない、といったニュースが報道されました。
しかし、2階建て住宅から審査が進み出し、大きくせき止められたものが、少しづつ流れていくようになりつつあります。
しかし、そういう問題とは別に、今回ピアチェック(*1)は、創造的な建物を考えるという建築設計本来の芽を摘むような制度となっています。
一級、二級を問わず、建築士は全国に101万人。そのうちの構造設計者は、わずかに4%程度ですが、私の知っている3人の構造設計者は、一人は、『もう、こんな仕事や〜めた!』とリタイヤし、一人は、設計ではなく、審査する側にまわってしまいました。
それは、なぜでしょうか。
一つには、小さな木造3階建てから、重量鉄骨造、さらには大規模な鉄筋コンクリート造といった幅広い構造設計をしなければならない小規模な構造設計事務所では、構造計算ソフト代(*2)や更新料も高額で、コストがかかる割に、仕事が分散され、多額の更新料を支払うほど、設計料は高くありません。
どちらかというと更新料を支払ったのに、その年はその分野の仕事はなく、持ち出しになるといったケースもあるでしょう。
しかし、もっと大きな理由は今から述べることかも知れません。
そもそも、構造計算あるいは構造計算基準といわれるものは、単純な形をベースに考えられていますし、指針も特異な形状を解説した指針書などはありません。
しかし、賃貸マンション、公営住宅といった画一的でよい建物以外は、日本全国、同じデザイン、同じ間取り、同じ外観の建物などどこにもありません。
それだけ、建物一つ一つの平面も立体も違っています。
そのため、今まで、四角四面の建物は別として、少し特異な平面計画であったり、特異な断面形状となった建物は、申請をする前に、審査機関に相談に行き、「これこれこういう計算方法で解析したいと思うが良いだろうか」という相談をしていました。
そして、構造設計をする側と、審査をする側で協議して合意された方法で設計をしていれば、建築確認を提出しても、問題なく通っていました。
しかし、今回のビアチェックでは、第一段階の審査機関とは協議出来ても、第二段階のピアチェック機関とは協議出来ないのです。(というよりも、そういうルートが作られていない)
では、特異な建物形状を、構造設計者と第一段階の審査機関で協議してOKだった計算方法が、ピアチェック機関の審査でOKとなるかどうかは出してみなければ分かりません。
しかも、制度の厳格化ルールのおかげで、訂正は出来ないのですから、ピアチェック機関で、「この計算方法ではダメだ」と言われただけで、建築確認の出し直しです。その結果、マンション規模であれば、数十万円以上の申請料が戻ってきません。
その戻らない申請料は誰が負担するのでしょうか。設計事務所か構造設計者以外にはありません。
その計算方法がアウトであれば、間取りやデザインも設計変更し、再度の申請で時間もかかり、建築主から怒られ・・・・とろくな事はありません。
そうなれば、危ない端はわたらな〜い。と考えても不思議ではありませんね。
特異な形状や歪な建物の設計はやらないよ〜。と最初から逃げを売った方が身のためですね。
強度偽装事件を受け、国からの諮問機関となった調査委員会の座長は、今回の制度を、『羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く(*3)』と述べていますが、まさに、創造性の芽をつみ取るような制度改悪。
表題の「箱しか建てられないよぉ〜。」とは、協議も調整も出来ない硬直した審査制度から生まれてくる建物のことなのです。
(*1)ビアチェック:今年6月20日に改訂された建築基準法では、一定規模以上の建物では、構造審査の二重チェックを義務づけている。
(*2)構造計算ソフト:木造3階建て、鉄骨造、鉄筋コンクリート造とそれぞれソフトは異なり、それ以外にも杭やよう壁などの場合によっては計算ソフトが必要で、すべてを揃えると数百万円になる場合もあり、独立開業する場合でも、もっとも高額のソフト代が必要となる。
ちなみに意匠設計者は、フリーソフトを使えば、ソフト代は不要。
(*3)羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く・・・・熱い羹(汁物、スープ)で舌など口の中を火傷したのに懲りて、冷たい膾でさえも吹いて(息を吹きかけて冷まして)食う。つまり、一度失敗した事に懲りて無益な用心をすること
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