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ゆがんだ試験制度 20007.08
2007年6月20日、建築基準法が改定され、一定規模以上の建物には、建築確認の時点で、構造計算のダブルチェック(通称、ピアチェック)が義務づけられるようになりました。
これは、姉歯元建築士の構造計算偽装を見抜けなかったことを教訓として、新たに構造計算判定員という資格をつくり、一般の建築確認時のチェックと、偽装を見抜くプロ判定員のダブルチェックで構造計算の偽装や間違いを見抜こうという制度です。

でも、最近その構造計算判定員の検査が行われましたが、合格率は60数パーセントにしか達しません。
もちろん、受けているのは、構造審査のプロばかりですよ。
この数字は、言い換えれば構造計算のプロでさえ、偽装を見破れる能力は2人に1人程度の人しかしない。。と言える反面、この試験制度の愚かな背景がそのような低い結果にしかならなかった原因があります。
その理由とは、何でしょうか?
この構造計算判定員の受験資格は、7〜10年の実務経験といったものとは別に、実は、たった2件だけ、実際の構造設計を経験していればいいのです。
どんな世界でも、足かけ○年という修行期間が必要ですね。どんな世界でも、その道の学校を出て、すぐに一人前のプロになどなりません。
構造設計の例で行けば、何件もの設計経験があって初めて、やっと独立しても恥ずかしくない程度の力量は出来たかな。。。あるいは、プロして一人前になれたかな。と考えるものです。
まして、構造計算の偽装や間違いは、単に計算のつじつまが合っているかどうかではなく、どこに偽装が隠されているのかを見抜く眼力が必要です。
図面を見て、計算書を見ておかしいと気づく能力が必要です。
それは、多くの経験をしなければ持ち得ない能力です。
別なたとえをすれば、大勢の歩行者の中からスリを見抜き、スリを現行犯で捕まえるためには、それなりの経験とと実務が必要です。
スリの見分け方・・・なんてマニュアルを作ったところで、そんなものは役にはたちませんね。
でも、この試験制度では、わずか2件の設計経験でよく、これは、役所の人間にも受験資格を与えることを念頭においたものにほかならないでしょう。
一連の強度偽装事件では、役所の審査部門も、民間の審査機関も素通りをしていましたね。そして、彼らの「今の審査制度では、見抜けないのだ」という言い訳だけが目立ちました。
上滑りの、表面的な数字のチェックだけで過ごした10年の経験と、実際の建物の設計を試行錯誤しながら過ごした10年の経験とでは、自ずと違うような気がします。
まちがいが無いかを見抜こうとする眼力も経験もなく、制度のせいにするかれらに、いくら制度を作っても、計算式の重箱の隅をつつきまくるような、計算式のつじつまだけを合わそうとするチェックしか機能しないような気がするのです。
なぜ、そう感じるか、次回の「退化する構造設計」をご覧ください。
なお、耐震偽装事件の後、既存マンション住民の耐震強度への不安から、多くの既存マンションの耐震強度の判定に協力してきた(社)日本建築構造技術者協会では、今回の制度を受けて次のようにコメントしている。
「構造計算適合性判定は、チェックリスト方式による画一的な適法性の審査が実施されようとしているが、専門家同士の対話により良質な建築を生み出すことが可能な制度運用への変更提案と人材育成の提案する」
「今回の改正は、構造計算偽装事件に端を発した社会不安に対し、早急な対応を迫られた暫定的な措置である。一部の不心得者対策のための設計者性悪説に立脚した改正は、大部分の設計者に無用な負担を強いるばかりで最善な解決にはなっていない。」
■補足
今回の法改正は、次の点で現場が大混乱しています。
1.実際の運用がわかる告示(法律)は、改訂日の1ヶ月に知らされた。
2.それらを承知する説明会は、7月に入ってから始まる
3.肝心の構造関係の講習会は、9月に入ってから始まる
4.構造関係のソフトは、改正の時点で認可もされていない。
つまり、道交法がわかるぞ・・といってかえたものの、誰も何も知らず、衆知すらしていないのが今回の法改正なのです。
といってもこの話、建築主の人には、ほとんど関わりのない部分ですが、ピアチェックという言葉だけでも覚えておきましょう。
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