良心にゆだねる制度

賃貸大手レオパレス21の全国33都府県にある1324棟で、建築基準法違反の疑いのある施工不良が見つかった事件。
天井や外壁の耐火性能が不足していたり、界壁(住戸間の壁)の耐火や遮音性が基準を満たしていなかったりしていました。
今回の施工不良は1996年から2001年に建てたアパートで確認されたということなのでしょうが、本当にそれだけなのか疑問です。

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 手抜きの温床

いま(2019.02.20時点)報道されている大きな違反は、

1.石膏ボードを二重にはるべきところを一重しか貼っていない。
2.住戸間の界壁に隙間がある、あるいは耐火の基準を満たしていない。
3.外壁に発泡ウレタンが使われ、耐火基準を満たしていない。

といったことが上げられていますが、実はこれらは、「手抜きの温床」になる部分なのです。

検査のない完了検査

 変なタイトルですが、工事中の検査は実質的にはほとんどありません。賃貸住宅であれば、基礎工事の時の配筋検査と、上棟後の中間検査が終われば、あとは完了検査まで、検査はありません。
ところが、上の3つの違反は、いずれも上棟してからの下地段階で行われる工事で、完了検査の時にはどうなっているのか表面から見てもわかりません。
もちろん、工事写真の提出も不要です。
つまり、手抜き工事のやりたい放題なのです。
言い換えると「施工者の良心にゆだねられている」の現状です。

入りは難しく、出るのは簡単

日本の資格制度のほとんどが、「入るのは難しく、出るのは容易」という制度になっています。
大学入試がそうですね。入試で選別されるものの、在学中はどれだけ遊んでいようと、どうにか卒業できます。
難しい国家資格も、とってしまえば一生ものです。
日本の制度そのものが、そのような考え方に立つ制度を基本にしているせいか、建物を建てるときの事前協議、近隣同意、関係課との打合せ等々、時には膨大な量の書類をつくった後に、始めて確認申請が提出出来るときもあります。
ところが、確認申請が下り、工事が始まると基礎の配筋検査と、文字通り形式的な中間検査以外は、建物が完了したときの「完了検査」以外には検査は一切ありません。
これも、「入るのは難しく、出るのは容易」という制度になっています。

防げないのか

防ぐことは簡単です。
工事写真の提出を義務づけても、室内写真であれば他物件の写真を提出されてもわかりませんが、完了検査の時に、ちょっとした手間をかければ簡単にわかります。

1.コンセントプレートを剥がせば、壁の石膏ボードの厚みがわかり、
2.さらにその穴から内部の断熱材が適切かどうかがわかり、
3.ユニットバスに必ず設けられている天井点検口から天井裏を覗けば、界壁の工事も確認できます。もちろん、天井の石膏ボードの種別の確認も可能です。

でもそのような手間暇をかける検査員など見たことがありません。
というよりも検査員も「法律で決められている範囲の検査」をしているに過ぎません

業者が悪いと言うのは簡単です。
でも、ちょっと検査方法を吟味するだけでも「手抜きが出来る」という考えを封じることが出来るのですが、レオパレスに限らず、賃貸物件では「安く、早く」が至上命題ですから、今回のような「手抜き工事」は、氷山の一角のような気がします。

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