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■断熱性能を少しアップしようとすると
『この地域ではこの程度で十分ですよ』・・と言われてしまいました。
断熱性能というのは、長い長い建物の寿命の中でエアコンやストーブの光熱費に関係するだけでなく、家の中の生活の快適性にも大きな影響を与えます。
・断熱性能のランク
建物の断熱性能にも目安があり、下表のように次世代省エネルギー仕様や新省エネルギー仕様など、3段階のランクが設けられており、どの程度のランクにするかは注文者や売り主の任意で決められており、断熱材に限って言えば法律の強制は一切ありません。(注1.2.3)
・住宅の平均像
注文住宅を含め、建売、分譲住宅、建築条件付きなど建物の平均的な断熱性能は、下図の真ん中の新省エネルギー仕様のレベル(等級3)がもっとも多く、時々、それよりも低い等級2程度の断熱性能しか保っていない建物も建築条件付きの建物などでは売り出されています。

そんなときに、買い手や注文者が「もう少し断熱性能を上げたいんですが・」と言ったときに「いやぁ〜。この地域ではこれで十分ですよ」といった言葉を返してくる営業マンや設計者がいるのですが、それは正しいのでしょうか。
こたえは、ノーですね。
上の図のように断熱性能が上がるにつれて、天井や外壁、床の断熱材の厚みが厚くなっていくと同時に、光熱費の試算も大きく変化していますね。
断熱材の厚みを上げればどうなるのか。断熱材の効果はなかなかわかりづらいことですが、次のように考えればわかりやすいでしょう。
・エアコンの台数
標準的な性能の新省エネルギー仕様(等級3)が各部屋にエアコンが必要なのに対して、最高レベルの次世代省エネルギー仕様(等級4)になり、さらにサッシを高性能なものにすれば文字通り各階にエアコンは1台だけですませてしまうほどの違いがあります。
・光熱費の変化
光熱費は、上の試算ではわかりやすくするためにわざと24時間全室暖房として計算しているために少し現実的な運転と差がありますが、それでも同じ条件であれば光熱費が1/3程度下がることは分かりますね。
つまり、断熱材の厚みの差は、長い長い住まいの生活の中で快適さと省エネの2つを向上させることになり、厚ければ厚いほどこういった効果も正比例して高くなっていきます。
もちろん、コストの問題などもありますから、新省エネルギー仕様(等級3)から一気に次世代省エネルギー仕様(等級4)にしなくても、断熱材を少しだけ厚くするだけで、それに相応して光熱費は下がり、快適性はアップしていきます。
なぜ、この営業マンはこのように、「この地域ではこれで十分ですよ」という返事を返すのでしょうか。
その理由は、2つあります。まずひとつは、
「しらない。分からない。邪魔くさい。誤魔化してしまえ」です。
まず、彼ら自身が「エアコン1台で過ごせるすばらしさを知らない」あるいは「分からない。」ということが上げられます。しかし、大手ハウスメーカーのシリーズで、最高レベルの次世代省エネルギー仕様が無いハウスメーカーなど存在しないですし、次世代省エネルギー仕様を標準グレードとしているハウスメーカーも多く存在しているということすら調べていないという職務放棄的な「邪魔臭さ」があるのかも知れません。
あるいは、「そんな変更工事を言うと業者も混乱するし、面倒な話は−これでよいのだ−と誤魔化してしまえ。」と考えていた、ということも考えられます。
そして、設計者であれば「次世代省エネルギー仕様」とか聞いたことはあるが全く勉強していない。それなら、「この地域はこのぐらいで十分だ」と言いくるめてしまえ。と言うこともあるでしょう。
つまり、勉強不足で自分が売っているものしか知らない、というタイプで、設計者にも営業マンにも多く見かけます。
こういったタイプには特効薬はなく、「もっといろいろなハウスメーカーの仕様を勉強してごらん。エアコン1台で過ごせる生活を知っているかい」といった事から話を進めるしかないでしょうね。
もっと平たく言えば、あなたの持っている知識や情報よりも低い知識や情報しか持っていない程度のヤツ。あるいは面倒なことをしたくないと考えている不親切なやつ。と考えておつきあいをしなければならない、ということなのです。
そして、厚みはいくらにしてくれ。と一方的に指示をした方が良い場合が多いです。(もっとも経験がないので、二の足を踏み、それはそれでするための抵抗をひと騒動する場合がありますが、いずれにしても手のかかる相手と認識しておきましょう)
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もう一つ理由、それは軸組工法の営業マン、設計者に多いある誤解から、「断熱材は厚くするな」と勘違いをしているケースです。
このケースでは、異口同音に
「これ以上断熱材を厚くすると壁内の通気が取れなくなります」
と言ってきます。
確かに壁内結露を無くすためには、通気が必要である。というのはセオリーなのですが、かれらは例外なく壁の中に隙間があれば、それが通気層となり、湿気をとっているのだと思い違い(誤解)をしているのです。
内部結露を防ぐには、室内側に透湿抵抗の高い「防湿気密シート」のを張り、室内側の湿気が壁内に入らないようにし、その上で柱の外側に通気層を設けて、壁内に入り込んだ湿気を外部に放出します。その通路として「外壁通気工法」といったものを採用します。そして、下図のように壁の中の湿気は、柱の外側に通気層を設け、通気層を通って最後に軒裏換気口や棟換気口から排出します。
しかし、下右図のように壁の中の隙間は結局上の梁で遮断されるため意味を持ちませんし、仮に断熱材や防湿シートの上に隙間が開いているなら、湿気は天井内に流れ込むという本末転倒した状態になってしまいます。

この理屈は、通気層の仕組みを間違ったまま思いこんでいる人にはなかなか理解しがたいのですが、これを寒冷地に置き換えればすぐに分かる話なのです。
たとえば関東地域、関西地域の標準的な仕様である省エネルギー仕様(等級3)を北海道の軸組工法に当てはめると、外壁の断熱材の厚みはグラスウールでは120mmも必要です。(関東・関西では60mm)
それでは、北海道では柱を150mmに太くして120mmの断熱材を入れて隙間を確保しているのでしょうか。まさか北海道は柱を太くしなければ家は建てられない・・なんて話は聞いたこともありませんね。
このように『壁体内結露=壁の中の隙間』と短絡的に考えて、しかも自分たちの周囲の環境しか知らずに勘違いをしています。
彼らは、いたずらに断熱材と壁の間に隙間を設けないと壁内結露が発生するという盲目的な思いこみにかじりついて断熱材の厚みアップを受けいれないのです。別の言い方をすれば、「井の中の蛙大海を知らず」。自分たちの知っている小さな井戸の水を大海と誤解しているのと同じなのです。
それゆえに、通気層の知識を誤って持っているために、説明や理解を求めることには難があり、まだ、直感的な寒冷地との比較の話(北海道では柱は150mm必要か・・)をするのが相手にもわかりやすいかもしれませんね。
・では北海道では、柱は太くするんですか?
・市販されている厚み100mm以上の断熱材はすべて天井用ですか?
そして上の図などを参考に説明をする以外にありませんが、それでも、彼らに対しては、海がいかに大きいかを口で説明してもわかってもらえないのと同じような歯がゆさを感じるかもしれません。
なお、こういう感覚の業者ほど、断熱材の施工あるいは監理が例外なくおざなりな場合が多いですから要注意です。
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注1:
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実際には断熱性能無しの等級1もありますが、断熱材無しでも良いというそんな住宅は存在しないので、ここでは省略しています。 |
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注2:
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フラット35等では、最低でも等級2以上必要で、ランクのよって割増融資や特典がある融資を受けられます |
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注3:
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大きな建物になると省エネ法により、一定の断熱性能が義務づけられるようになりました。
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